前回は『還願』に登場する縁起物について書きました。同じシーンでは、タイトル画面にあるように「陰陽水をかける」や「隅に硬貨を撒く」などまだよくわからない言葉が書かれています。これらについて調べたので、お伝えできる範囲でご紹介したいと思います。
陰陽水をかける
そもそも「陰陽水」とは……
水を加えてぬるくした湯。埋湯(うめゆ)。
参照元:朝日新聞社, “陰陽水”, コトバンク, <https://kotobank.jp/word/%E9%99%B0%E9%99%BD%E6%B0%B4-2009703>, 2019年8月16日アクセス.
〈中医〉水と湯を混ぜたもの;川水と井戸水とを混ぜたもの.
【補足】薬を煎じたり飲んだりするのに用いる.
参考文献:小学館・北京商務印書館編 (1992・2003)『中日辞典』第2版, 小学館.
つまりぬるま湯ですかね。読み方は「おんみょうすい」ではなくて「いんようすい」らしいです。「飲用水」と間違えてしまいそうですね。東洋医学でよく使われるらしく、体の調子を整えたりする効果があるみたいです。
ではこの「陰陽水」を「かける」とはどういうことなのでしょうか……
YouTube上に、台湾のニュースチャンネル・三立新聞台(SET News Channel)の動画で参考になるものがありました。
これは引っ越しではなく、端午節に運気を良くする内容のものなのでちょっと違いますが、同じ「陰陽水」なので似たような効果がきっとあるはず…… 35秒過ぎあたりから「陰陽水」が登場しています。これによると「陰陽水」は「運気をよくする効果」があり、「かける」ことで「浄化」することもできるとあります。
『還願』では、引っ越しの際には「身を浄めましょう」ということで「陰陽水をかける」のでしょうね。
家具に赤い紙を貼る
これはハッキリとしたことがわかりませんでした。「なぜ家具に赤い紙を貼る必要があるのか」という記述が見つからず…… なので私の推測ですが、中華圏でおめでたい色といえば「赤色」を思い浮かべると思います。下の画像は、台湾に住んでいた頃、旧正月で賑わう迪化街を歩いた時の写真です。
やはり赤色が目立ちますね。
なので「家具に赤い紙を貼る」というのは、おめでたいこととして「家中をめでたい赤色にしよう」ということなのかなと思いました。
もし正確な情報がある方は教えてください。
隅に硬貨を撒く
これは、どうやら引っ越した際に部屋の隅に硬貨を撒くことで「金運アップ」するそうですよ。
バケツに硬貨を入れる
これもさきほどの三立新聞台(SET News Channel)が参考になりそうです。
1分過ぎあたりから、さきほどの陰陽水が入った鍋に硬貨を入れて沸騰させています。おそらくこれが「バケツに硬貨を入れる」を表しているのではないかと思います。
この動画にはこれをどうするのかという紹介はありませんが、他のサイトで調べてみたところ、陰陽水と硬貨とを沸騰させた水を「錢母水」や「財水」と呼び、この「財水」を金運が集まるとされる「財位」に置いておくと「金運アップ」の効果があるとされているようです。また中国語では「沸騰する」ことを「滾」というのですが、この「滾」には「転がる」という意味もあります。そのため「“滾”させる(沸騰させる)ことで、金運が“滾來”する(転がり込む)ように」という意味が込められていると紹介している記事もいくつか見つかりました。
まとめ
前回と今回で『還願』の背後にある台湾の文化をもっと理解できたかと思います。たった1シーンの中にたくさんのことが詰まっていましたね。「ふーん」といって流してしまっても特にそこまで影響のあるシーンではありませんが、背景を知れば少し違った視点から考察できるかもしれません。今回初めて知ったことが私もたくさんありました。そのおかげで「ドゥ・フォンウがここまで縁起物にこだわるなら宗教にのめり込むのも無理はないかな」と新しい発見がありました。
みなさんも新たな発見をしてくれれば幸いです。
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