『Bladed Fury』巫児(みこ)について

Bladed Fury
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今回からは、『Bladed Fury』に登場する言葉やキャラクターについて書いていきたいと思います。今回は「巫児」という言葉について書きます。

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巫児とは

タイトル画像にあるように、作中「巫児は嫁いではならないのに」とあります。「巫児」とはなんでしょうか。

結論からいうと、「長女はお嫁に行ってはいけません」という習わしのようです。

日本語ではそれらしいものがヒットせず、中国語で検索してみると、どうやら斉の襄公じょうこうの時代(別の記事にて説明します)にできたようです。中国の歴史書『漢書・地理志』に「巫児」に関する内容が記載されているので、中国古代の文献を提供しているサイト「国学梦(http://www.guoxuemeng.com)」から引用します。

初,太公治齐,修道术,尊贤智,赏有功,故至今其土多好经术,矜功名,舒缓阔达而足智。其失夸奢朋党,言与行缪,虚诈不情,急之则离散,缓之则放纵。始桓公兄襄公淫乱,姑姊妹不嫁,于是令国中民家长女不得嫁,名曰“巫儿”,为家主祠,嫁者不利其家,民至今以为俗。痛乎,道民之道,可不慎哉!

※赤字はぴよっぴによる

参照元:“汉书:志·地理志下”, 国学梦, 

<http://www.guoxuemeng.com/guoxue/2229.html>, 2019年9月7日アクセス.

難しいですね。さすがにわからないので、日本語訳がある文献を探したところ『漢書食貨・地理・溝洫志』(1988年、平凡社)に『漢書・地理志』の部分翻訳があるとのことでしたので調べに行ってきました。以下引用します。

太公が斉を治めたそのはじめ、道術がくもんを修め賢者智者を尊び、功労ある者を褒賞した。このため現在に至るまで、この土地では経学を学ぶ者が多く、功名を誇り、ゆったりと構えて、知慧も十分である。その欠点は、奢侈で、党派を組み、言行が一致せず、うわべだけで真情が判らぬこと、あるいはしめつけると逃げ出してしまい、ゆるめると勝手をする点などであろう。桓公の兄襄公は淫乱で、姑姉妹おばたちは嫁に行けなかった。そこで、国中の家々に長女を嫁がせぬよう命令を出し、「巫児みこ」と名づけて、その家のまつりを主宰させた。とつがせれば、その家によくないとて、民間では今でもそれが習俗ならわしとなっている。痛ましいことであり、民を導く方法は、慎重でなければならぬ。(班固著 永田英正・梅原郁訳 1988:288ページ)

※赤字はぴよっぴによる

つまり、かつて斉の国を治めていた襄公が近親相姦野郎で、そのせいで長女が結婚できなくなりました。その長女に、家でお祈りをする役割を与え、彼女たちを「巫児」と読んだということになります(どういうロジックかはわかりませんが……)。ちなみに「民間では今でもそれが習俗ならわしとなっている」の「今では」とは、「漢書」は「漢代」について書かれているので、「漢代」を指すかと思われます。

作中では「父上は今に貴方を嫁がせる気です、巫児は嫁いではならないのに、父上は…」とあります。「巫児」である「叔姜」は、本当は嫁いではならない身なのに、父上が嫁がせてしまうということでしょう。当時実権を握っていた田氏には逆らえずに承諾したのでしょうか。

まとめ

今回は「巫児」についてご紹介しました。どの国の娘がどの国に嫁ぐかというのは、権力争いをする上で非常に重要な要素のため、政略結婚なんてザラだったのですね(ゲーム内では「古神の血脈」を欲した田氏が同じ斉国の「叔姜」を娶るという設定ですが)。恋愛結婚もできないなんて可哀想です。さらには、そもそも結婚できない習わしがあるとは……恐ろしい時代です。

 


参考文献

[1] 班固(1988), 『漢書 食貨・地理・溝洫志 』, 永田英正・梅原郁訳, 平凡社.

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