『返校』黒白無常について

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以前『返校』というゲームをご紹介し、そして台湾の民間宗教についてもザックリとご紹介したと思います。今回からはその知識を前提として、『返校』に登場し、そして日本人にとって馴染みのない言葉を解説したいと思います。

今回は「黒白無常」です。私もこのゲームで「黒白無常」について知りました。

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黒白無常とは

こちらはタイトル画像にあるように、作中でも簡単に説明されていますね。ここではもう少し詳しく説明します。黒白無常は城隍神1に仕える神様で、人間の魂を冥府へ連れて行く役人です。

「黒白無常」は「七爺八爺」とも呼ばれています。背の低いほうが「黒無常」「七爺」で、背の高いほうが「白無常」「八爺」です。「黒無常」は「矮爺」「赤爺」、「白無常」は「躼爺」「白爺」とも呼ばれています。2

では「黒白無常」がなぜ人間の魂を冥府へ連れて行く役割を持つようになったのか紹介したいと思います。


1:「城隍神」については次回ご説明します。

2:「七爺八爺」の由来は、「七」「八」番目に城隍神に仕えたからという説があります。また「矮」は中国語で「背が低い」ことを意味します。「躼」は「背が高い」ことを意味するようです。「白爺」は顔が白く、「赤爺」は顔が赤黒いのが由来のようです。

成り立ち

それではなぜ彼らが人間の魂を冥府へ連れて行く役人となったのか。諸説あるようですが、私が調べたものを一つご紹介します。

彼らは、昔の福州の役所に勤める仲間でした。2人とも義理に厚く、互いによく助け合っていました。

ある日、役所の仕事で旅に出ることになりましたが、南台橋のところまで来た時、突然大雨が降り始めました。「自分は足が長くて速いから」と八爺が傘を取りに戻りました。家に着いた八爺は腹が痛くなってしまい、すぐに引き返すことができません。七爺はずっと待っていましたが、川の水は段々と増してきます。しかし七爺は、「自分がここにいないと八爺が心配する」と思い、そのまま待つことにしました。七爺の首まで水が迫ってきますが、七爺は橋げたに抱きついて離れず、ついには死んでしまいました。

体調が良くなると八爺は急いで橋に戻ります。死んでしまった七爺をそこで目にして大変悲しみました。自分のせいで友人を亡くしてしまい、八爺は後を追って川へ飛び込んで死のうとします。しかし、既に水が引いていた上、背が高い八爺は死ぬことができません。仕方なく、岸に上がり木に首を吊って死にました。その背には、友のために持ってきた傘が差されたままだったそうです。

信義のために死んだこの2人の徳を称え、人々は八爺を「謝将軍」、七爺を「范将軍」という神様にして祭ることにしました。「謝」は八爺、「范」は七爺の苗字です。また、「将軍」とは城隍神に仕える神様で、人間の魂を冥府へ連れて行く役目のことです。

謝将軍(八爺)は、自分の過ちで友人を死なせたので、神様になっても非常に優しく、失礼なことをしても大抵は許してくれるそう。そのため謝将軍は、人々から「謝必安3」と呼ばれるようになりました。

范将軍(七爺)は、生前の一番親しい友人でさえ約束を守らなかったことを怒って、非常に短気になりました。人間がいくら謝ってもなかなか許してくれないので、人々から「范無救4」と呼ばれるようになりました。

また、七爺の顔が赤黒いのは溺れ死んだからで、八爺が舌を出して白い顔をしているのは首を吊って死んだからです。そして八爺は必ず傘を差しています。


3:「謝必安」は、「“謝罪”をすれば“必ず”“安全”である」の意。

4:「范無救」は、「罪を“犯せば”“救い”は“無い”」の意。(「范」は「犯」と同じ発音)

まとめ

今回は黒白無常についてまとめました。『返校』ではそこまででしたが、『陰陽師本格幻想RPG』や『IdentityV』では主要キャラとして登場していますね。

次回は、今回も少し登場した「城隍神」についてご紹介します。

 


参考文献

[1] 張良沢 (著)・丸木俊 (イラスト) (1988) 『太陽征伐 : 台湾の昔ばなし』 小峰書店.

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