『返校』台湾の民間宗教について

お勉強系
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以前『返校 -Detention-』というゲームを紹介しました。

プレイした人はわかると思いますが、作中「城隍神」「黒白無常」「笑杯」など台湾の神様や宗教・文化に関するよくわからない言葉が出てきたと思います。私は1年間台湾に住んでいたものの、宗教や文化に詳しいわけではありません。翻訳者として「これじゃいかん」と思い、休日を利用して台湾の民間宗教に関して調べてきました。私なりにまとめたものをご紹介したいと思います。

今回はゲームに登場した「城隍神」「黒白無常」「笑杯」などのお話ではなく、その前提として台湾の民間宗教に関する全体的なお話をしたいと思います。

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全体的な話

台湾は一般的に日本よりも民間宗教の信仰が発達しています。この記事のタイトル画像は、私が台湾にいた時に龍山寺という有名な寺院で撮った写真です。留学中3回行きましたが、いつ行ってもこんな感じで人がいっぱいいて、熱心に祈りを捧げている人が必ずいます(外国人もけっこういますが……)。日本のお寺や神社でこんなに人がいるイメージは、特別な日を除いてあまりないのではないでしょうか?

また台湾では2017年頃に『通靈少女』というドラマがヒットしました。「通靈」とは霊的な力を指し、その名の通り霊的な能力を持つ少女が人々の悩みを解決したりするドラマです。このドラマの中では、寺院にいる少女の元へたくさんの人々が助けを求めにやってきます。こうしたドラマがヒットするという事実からも台湾の人々がいかに神様や霊的な力を信仰しているかがうかがえます。(ちなみに主人公の女の子は童顔巨乳で有名な郭書瑤という方です。全6話で気軽に見れるので興味がある方は見てみてください)

そして台湾の民間宗教は仏教・儒教・道教が融合したもので、信徒の大多数が諸宗教を混同して信仰しているようです。

媽祖と王爺

台湾で最も信仰の厚い神様として「媽祖」「王爺」がいます。

媽祖について

媽祖(まそ)は、航海・漁業の守護神として、中国沿海部を中心に信仰を集める道教の女神。尊号としては、則天武后と同じ天后が付せられ、もっとも地位の高い神ともされる。その他には天妃、天上聖母、娘媽がある。台湾・福建省・潮州で特に強い信仰を集め、日本でもオトタチバナヒメ信仰と混淆しつつ広まった。親しみをこめて媽祖婆・阿媽などと呼ぶ場合もある。

参照元:“媽祖”. ウィキペディア. 2019年7月19日更新. <https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AA%BD%E7%A5%96>. 2019年8月10日アクセス

媽祖は中国人にとっても、最も身近な女神の一つです。その素性を語る説はいずれも伝説の域を出ません。「海で父親を救おうとして自らは溺れ死んだ」「湄峰の高みから飛翔して帰らなかった」など色々と語られているようです。

また台湾で信仰されるようになった物語の一つにこのようなものもあります。

中国大陸では清王朝ができて、明王朝を南へと押しつぶそうとしていました。福建・広東では戦乱が頻繁に起こり、飢饉が続き、農民たちは故郷を捨てて海外へ新しく生きる道を求めました。その多くが台湾を目指し、台湾海峡を渡っていきました。しかし、台湾海峡の波は高く、台風がしょっちゅう襲ってきます。その上、海賊が頻繁に出没し、そこを渡るのは命がけでした。

そんなとき、媽祖様は常に台湾海峡の空にて、かわいそうな農民対地を見守ってくれたのでした。

台湾は当時、平野に原住民の部落が少しあるだけでほとんどが未開の地でした。やっとのことで台湾の地を踏むことができた農民たちはそれを目にすると勇んで開拓しました。

こうして台湾の人々は、媽祖のおかげで無事海を渡ることができたのです。

また媽祖文化は日本にも伝わっているようで、新宿や横浜に媽祖を祭った寺院があります。長崎では毎年「長崎ランタンフェスティバル」というお祭りがあり、そこでは「媽祖行列」というものが開催されるそうです。いつか見に行きたいものですね。

王爺

王爺は台湾、特に南部の地方において広く信仰を集めています。この王爺は現在では様々な霊験を持つ万能神となっていますが、元々は瘟神、すなわち疫病神でした。

現在は王礁と呼ばれる祭りが定期的に行われています。これは、天に代わって巡察にやってくる王爺を迎え入れ、御輿に乗せて巡航するお祭りです。お祭りが終わると、航海に必要な様々な道具や食料とともに神像を王船と呼ばれる船に積み込み、これを焼くことによって王爺を送り出します。

王爺については媽祖ほど情報がなく、これしか調べることができませんでした。すみません……

まとめ

かなりざっくりとした説明でしたが、台湾の人々にとって神様や寺院という存在が日本よりもかなり身近にあることがおわかりいただけたと思います。『返校』の中でレイちゃんのお母さんがよくお参りに行っていたこと、またレイちゃんが神様に色々と聞いていたのは全然普通のことなんですね。今回はここまでにして、次回は『返校』に出てきた「黒白無常」について書きたいと思います。

 


参考文献

[1] 立川武蔵編  (2012) 『アジアの仏教と神々』 法藏館.

[2] 張良沢 (著)・丸木俊 (イラスト) (1988) 『太陽征伐 : 台湾の昔ばなし』 小峰書店.

[3] 野口鐵郎・田中文雄編(2004) 『道教の神々と祭り』(あじあブックス) 大修館書店 .

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