今回は「やけに強い雑魚キャラだなあ」と思って倒したら英魂として手に入っていた養由基について書きたいと思います。養由基に関しては二つの故事が有名ですのでそれぞれご紹介したいと思います。
養由基とは
まずは養由基とはどんな人物なのかウィキペディアから引用いたします。
養 由基(よう ゆうき、生没年未詳)は、春秋時代の楚の武将。弓の名人として知られる。
とのことです。では彼の具体的なエピソードについて見ていきたいと思います。
百発百中
養由基は百発百中の語源となった人物です。中国の文献を無料で紹介しているサイト中國哲學書電子化計劃から原文を引用いたします。
三十四年,蘇厲謂周君曰:「秦破韓、魏,撲師武,北取趙藺、離石者,皆白起也。是善用兵,又有天命。今又將兵出塞攻梁,梁破則周危矣。君何不令人說白起乎?曰『楚有養由基者,善射者也。去柳葉百步而射之,百發而百中之。左右觀者數千人,皆曰善射。有一夫立其旁,曰「善,可教射矣」。養由基怒,釋弓搤劍,曰「客安能教我射乎」?客曰「非吾能教子支左詘右也。夫去柳葉百步而射之,百發而百中之,不以善息,少焉氣衰力倦,弓撥矢鉤,一發不中者,百發盡息」。今破韓、魏,撲師武,北取趙藺、離石者,公之功多矣。今又將兵出塞,過兩周,倍韓,攻梁,一舉不得,前功盡棄。公不如稱病而無出』。」
ちょっとわからないので書き下し文を「国立国会図書館デジタルコレクション」から『史記. 第1』の画像をお借りいたします。
該当部分を文字で起こします。
三十四年蘇厲、周君に謂いて曰く、「秦、韓・魏を破り、師武を扑し、北、趙の藺・離石を取る者は、皆白起なり。是れ善く兵を用ふ、又天命有り。今又兵を將ゐ。塞を出でて梁を攻む。梁破るれば周危し。君何ぞ人をして白起に説かしめざるや。曰え、楚に養由基といふ者有り、射を善くする者なり。柳葉を去る百歩にして之を射る、百發して之に百中す、左右觀る者数千人、皆善射と曰ふ。一夫其旁に立てるもの有り、曰く、善し、射を教ふ可しと。養由基怒り、弓を釋て、劔を搤して曰く、客安んぞ能く我に射を教へんやと。客曰く、吾能く子に、左を支え右を詘することを教ふるに非ず、夫れ柳葉を去る百歩にして之を射る、百發して之に百中す、善を以て息まず、少くありて氣衰へ、力倦み、弓撥り、矢は鉤り、一發して中らざるものあらば、百發盡く息まんと。今韓・魏を破り、師武を扑し、北のかた趙の藺・離石を取る者、公の功や多し。今又兵を將ゐ塞を出でて兩周を過ぎ、韓に倍き、梁を攻む、一挙得ずんば、前功盡く弃てられん。公、病を稱して出づること無きに如かず」と。
詳しい現代語訳は他サイトに記載があるのでそちらにお任せすることにします。「百発百中 漢文」で検索すると出ると思います。ここではざっくりと書きます。
これは当時最強だった秦の白起を止めるために蘇厲が周君に献じた策の内容です。「楚に養由基っていう柳の葉から百歩離れても百発百中のすごいやつがいました。それを見てた人が『でも一発でも当たらなかったら百発百中じゃなくなって全部意味なくなっちゃいますよ』と言いました。白起は連戦連勝で今また梁を攻めようとしてるけど、もし負けたらこれまでの功績が無駄になっちゃうから、ここは仮病を使って出兵しない方がいいでしょうって白起にアドバイスしたら?」と周君に伝えたのが蘇厲ということです。
調弓号猿
これは「弓を調(ととの)えていると猿が叫(さけ)ぶ」という意味です。
この故事に関しても中國哲學書電子化計劃から該当箇所の原文を引用いたします。
楚王有白蝯,王自射之,則搏矢而熙;使養由基射之,始調弓矯矢,未發而蝯擁柱號矣,有先中中者也。
こちらの現代語訳に関しても「国立国会図書館デジタルコレクション」から『淮南子 : 現代語訳』の画像をお借りいたします。
以下該当箇所を文字で起こします。
楚王が白猿を畜つておいた。王が自ら之を射れば矢を搏つて戯れる。養由基(弓の名人)に射させると、弓を調べ矢矯めてまだ發しないのに、猿は柱を抱いて號叫した。中らない内から中る微侯があつたからである。
つまり楚王が猿を射ろうとしても、猿はその矢をつかんで遊んでしまう。そこで養由基にやらせてみると、養由基が射る前から猿は柱にしがみついて叫び出したという内容です。野生の勘とでもいうのでしょうか。それだけ彼の弓術が恐ろしかったということを物語っています。
ちなみにこの内容は私の好きな漫画『東周英雄伝』の3巻にも描かれています。
漫画の中では完全に猿を殺していますが、大木を突き抜けて猿を射抜くことで彼のすごさを描いています。
まとめ
今回はゲーム内で主人公の召喚獣的な存在で登場した養由基について書きました。個人的にはメインのボスキャラにしてほしかったですが……
参照元/参照URL
[1] ”養由基”, ウィキペディア, 2018年6月20日更新<https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A4%8A%E7%94%B1%E5%9F%BA>, 2020年4月16日アクセス.
[2] ”周本紀”, 中國哲學書電子化計劃, <https://ctext.org/shiji/zhou-ben-ji/zh#n4652>, 2020年4月16日アクセス.
[3] ”史記. 第1”, 国立国会図書館デジタルコレクション, <https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/958958/49?tocOpened=1>, コマ番号84-85, 2020年6月28日アクセス.
[4] ”說山訓”, 中國哲學書電子化計劃, <https://ctext.org/huainanzi/shuo-shan-xun/zh>, 2020年4月16日アクセス.
[5] ”淮南子 : 現代語訳”, 国立国会図書館デジタルコレクション, <https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/976851>, コマ番号212, 2020年4月16日アクセス.
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